瀞峡ツーリング。田戸〜小川口コース。
瀞峡は、いつでも美しい。晴天、曇天、霧でも雨でも。その日その日の寒暖に、右往左往する我が身を思う。 瀞にとってそんな人間の1日は塵芥。塵も積もれば山となろう、パドル一漕ぎの水の揺らぎがいつか岩を穿つだろうか、なんて夢想をしてみるが、何百何千年と変わらぬであろう姿と何が較べられるだろうか? 日一日と様子を変える植物に聞いてみる。
この日のツアーは、少し特別だった。数ヶ月も前からこの日の瀞峡ツアーの予約があった。申し込まれた方には事情があった。台湾から日本・関西旅行に行く、その折に瀞峡を訪れたい。さすがに秘境、大阪からもかなり遠い。スケジュールをよくよく考えないと、せっかくの旅行で楽しみ時間が減ってしまう。
いろいろ相談の結果、彼女は小川口乗船口まで、ジェット船で向かうとのこと。瀞峡には観光のジェット船が定期運行しており、そのジェット船で現地に向かい、僕らと集合する。台湾から関西への旅、そこから高野・熊野詣を経て、船で待ち人の元へと向かう…
他にも特別な事情があって、ふだんお留守番の妻もツアーに帯同。妻と自宅を出発、大阪駅で友人夫妻をピックアップ、一路瀞峡へ。小川口乗船場で、下流からの船を待つ。初めて瀞峡ジェット船をみる人が必ず驚くのが、その吃水の浅さ。膝までしかないような水深の河原に、数十人乗りの巨体が乗り付け、タラップがかけられる。ここで降りる人は稀だ。
大きな荷物を抱えた人が降りてくる。トレーシーだ。最初に連絡をもらって数ヶ月、ようやく彼女の旅路に僕のルートが重なった。
合流してからは、I & I の通常の瀞峡ツアー。小川口で準備を整え、次のジェット船で瀞峡・田戸へ遡上する。このジェット船も瀞峡探索の楽しみの一つ。幾つかの瀬やカーブをすごい勢いで駆け上っていく。ここ、2・3時間後には自分で漕いで戻ってきますからね、どんなとこかよく見ててくださいね。そう言いながら、後ほど皆が体験するであろうギャップの予感で、僕はワクワクしてるのだ。
田戸に到着、ここからさらに上流へむかうジェット船とはお別れ。こちらは吊り橋へと向かう。この橋から上 瀞を見上げる(正確には川を”見下ろし”ているはずなのに、”見上げ”ているとしか思えなかったりする)。上へ向かうジェット船に手を振る。さっきまで同じ船に乗ってたのに。あの乗客のほとんどとは一生会う機会無いんだろうな。
吊り橋の下から、いよいよ漕ぎ出す。何万年も変わらなかったであろう景色の一部となる。 景の遠近、温度、風。岩と水、小さな、しかし等身大のカヌーにのって漂う、いくつかの歴史。パドリングにはまだ慣れないものの、峡谷との距離が少しずつ縮まってくる。
瀞峡の出口(入り口?)、洞天門を抜けると、北山川の悠々たる流れが始まる。このあたりで遅めの昼食をとる..
ここの話はまた次に..
ランチ後は、再び川の旅に戻る。まったりしても、自分の手で漕ぎ切らなければゴールまで辿り着かないのだ。瀬もいくつか現れる。形も違えば速さも違う。瀬を漕ぐ緊張感と漕ぎ抜けた時の達成感、安堵を繰り返しながら、川の持つ水の流れを体で覚えていく。
この頃になると、誰でもカヌーに慣れてくる。自分が入り込んでいた景色の大きさに改めて驚嘆する。そして、その大きなものに、自分がどれほど近づいていたのかも。
疲れもある。だるく重い腕を動かしながらも先に進まなければならない。もう少しでこの旅が終わってしまうというジレンマを、川が押し流す。川は容赦なく流れる。留まりたい、留めたいという思いを風景を許さない。だからこそ、川は旅になる。川は一つの時間となる。自分の時間と、川の時間、水の時間が交わりながら、あっという間に1日が終わる。
先日、ある画廊のオーナーに”言葉にしてください。表してください”と言われることがあった。最近、僕が全然できていないことだ。ハッとした。カヌーに乗って水を掴む、その静謐で神聖な瞬間を、少しでも言葉にできるように、また書く時間を増やしていきたい。
I & I Paddles
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